この二枚のうつわは両方共、林拓児さんの石皿5寸です。作家さんの手仕事のものですので、若干の寸法や釉薬の様子は違ってきますが、基本的には同じお皿です。
違いはうつわの中心付近についている丸い跡です。
これはもちろん仕上げのミスなどではなく、「目跡(めあと)」という名前がついています。
同じうつわなのに、こうした違いがあるのは、限りある窯の中で多くのうつわを焼くための工夫です。多く焼くためにうつわを重ねて窯に入れるのですが、流れた釉薬によって上下のうつわがくっついてしまわないように、小さな粘土をスペーサーとしてはさみこみます。そのときの跡がこの目跡です。
この部分から水がしみたり気にされる方もいますが、しっかり焼成されているせいか特別心配されることはありません。強いて言えばその部分だけざらっとしていることくらい。もしかしたら嫌な方もいらっしゃるのかもしれませんが、私は必要性から生まれたデザインというか、この目跡がアクセントになっている様子が好きで、あるものと無いものなら、目跡があるうつわを選ぶことも多いです。
下は登川均さんの尺皿。こちらは目跡はなく「蛇の目」があります。中心に近い円の中には釉薬がかかっていません。
沖縄のうつわとして好きな方も多いやちむんなどに見られる「蛇の目」も同様の意味合いです。蛇の目は傷っぽくなくて、それこそデザイン的にそこだけ釉薬がかかっていないようにも見えるので気にされる方も少ないかもしれません。