2020.05.22

清岡幸道さんの陶器の作風について


清岡幸道さんといえば、端正な形状に渋い美しさを持つ釉薬の表現が魅力的な作家です。マットな金属の質感を思わせる錆釉や粉引、オリーブ色の灰釉や窯変など。

今年の展示会の打ち合わせの際に、改めて作陶に向かう姿勢や釉薬の表現について話を伺ったので、展示会前に簡単にご紹介したいと思います。

作風と表現:土・釉薬・焼き方

清岡さんは渋くて寡黙そうな見た目からは想像もつかないくらい話しやすい方です。お店を始める前から色々とアドバイスを頂いていたこともあり、いつも工房に伺うと丸一日滞在してしまいます。それでも自身の制作スタイルや技術については自分から積極的に話すようなタイプではないので改めてお話を伺うのには必要以上に緊張しました。

話を聞けば聞くほど経験も技術も引き出しが本当に多くセンスも良い方だなとつくづく感じます。職人という面と一歩引いた立場にいるディレクターのような側面で俯瞰的に作陶しているような。

今回紹介する内容は主に釉薬についてです。いろいろな作風がありますが、現在主に取り組まれている作品は大雑把にわけて釉薬は3種類。後は土と焼き方によって表現を操作されています。

まずはこちらの白い器。2019年から取り組まれている【晶白釉】です。
これは結晶釉の一種ということですが一般的にイメージされる結晶がキラキラ現れるような質感ではなくどちらかというとマット。

清岡さんが白灰と名前をつけて取り組んできた粉引の表現に変わる釉薬です。自分らしい白色を目指したという釉薬で、「白」と一言で言い表せない重層感を感じる風合いからは雪や氷を思わせる涼し気な印象を受けます。
最近作る割合が増えてきているという緑色の器をより引き立たせるために調合したと教えてくれましたが、この器単体でも十分すぎる存在感です。

次に【青灰】シリーズ(画像は青灰オリーブ)。
青灰と名前のつくものは①青灰②青灰窯変③青灰オリーブの3つがあります。どれも化粧土は使わず③に向かうほど高温で還元を強く焼き方を変えているそう。①ほどマット質で、③に向かうほどガラス質に見える部分が大きくなるイメージです。

これが青灰。土も釉薬も同じで焼き方を工夫することでここまで違う表現になるのが焼き物の面白さ、魅力の一つだと思います。知らなくても全く困りませんが、こうした知識があるとまた器の見え方も変わってきて器を見る楽しみも増えていきます。

そして【灰白】シリーズ(画像は灰白窯変)。
青灰との違いは白化粧をしていること。青灰同様に、①灰白②灰白窯変③灰白オリーブの3種類があります。それぞれの違いも青灰と基本的に同じとのこと。

こちらが灰白。ちなみに灰白オリーブはほとんど透明なグリーンのガラス質の表情です。

次に【オリーブ釉】(画像はオリーブ流し)。
オリーブ釉自体は結構長く取り組まれている作風ですが、オリーブ流しは比較的最近の表現になります。そもそものオリーブ釉は青灰で使っている釉薬を高温で溶かしたものだそうです。

こちらがオリーブ釉。(清岡さんの作品は本当にどれも魅力的で順位をつけるのは難しいですが、このカフェボウルは個人的にかなり上位に来るくらい好きな作品です。)
先程のオリーブ流しですがオリーブ釉と同じ釉薬に鉄釉もかけることで見込みの景色に変化を生み出しています。また土自体も違うため緑の表現でも雰囲気の異なる作品に仕上がっています。このオリーブ流しは本当に美しい深い表情ですが、器自体の形によっては野暮ったい和食器に見えてしまいそうな雰囲気もあります(※完全に私的な印象です)。そうした絶妙なバランスを高いレベルに昇華しているところに清岡さんの技術の高さとセンスの良さを感じます。

今回は釉薬を中心に紹介しましたが、次はもう少し俯瞰的に清岡さんの器制作に対する姿勢をご紹介したいと思います。


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