2018.11.08

焼継ぎ



一見なんの問題もないこちらの棚橋祐介さんのピッチャーですが、口のところを見ると少し違和感があります。


実は切れた部分を、パテのようにガラス質の釉薬などで焼き直して継いでいます。これを焼継ぎといいます。詳しくは調べるとわかると思いますが、割れ口に白玉粉と呼ばれる鉛ガラスの粉末を塗布し、焼成します。陶磁器の割れ口に塗った鉛ガラスが溶けることにより接着剤の役割を果たす原理です。

今ではうつわの修復というと金継ぎをよく耳にすると思いますが、歴史的には焼継ぎのほうが新しく生まれた技術のようで、江戸後期に広まったとされ伊万里など富裕層の生活道具であった器を直すために「焼き継ぎ師」と呼ばれる職人が活躍したみたいです。私のこのピッチャーの佇まいがとても好きで焼継ぎの跡も素敵な景色だと思います。しかし一般的には金継ぎのような装飾にはならず“傷”として残るため美術的な美しさは金継ぎに劣るのかもしれません。

ちなみに金継ぎは、安土桃山時代から江戸時代初期にかけての「茶の湯」から始まったんだとか。高価な茶道具を直すという意味合いと、傷を隠すのではなくあえて金や銀で装飾し「景色」として愉しむという2つの意味合いがあります。実際金継ぎで器を直そうとすると新しいものが購入できるくらいの金額は普通にします。


棚橋さんのうつわはよくアンティークのような、みたいな枕言葉がつきますが、使い込んで行くうちに欠けたりしてもそれが景色のような味になる魅力を感じます(それでも欠けたらショックですが)。


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